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​姿勢・呼吸・発声

声はどうやって出るのか?

人はどのようにして、声を発しているのでしょうか。考えてみたことはありますか?

 

人が声を発するステップは次の通りです。

 

1.呼吸運動(こきゅううんどう)
2.声帯振動(せいたいしんどう)
3.共鳴作用(きょうめいさよう)
4.調音(ちょうおん)

 

「呼吸」とは、息を吸って吐くことです。鼻や口から吸った息は、肺に届きます。声を出さない時は、吸った息をただ吐き出します。

 

声を出す時には、吐く息で、「声帯」を振動させます。声帯とは、喉仏(のどぼとけ)の奥にある、筋肉を包んだ粘膜(ねんまく)です。2本あります。帯状(おびじょう)になっています。

 

声帯が振動すると、その時点で音が生まれます。ただし、この時点では、とても小さな音です。その小さな音を「共鳴」といって、体内の空洞を利用して響かせ、大きな音にします。

 

ピアノやギターなどの楽器を思い浮かべてください。中が空洞になっていますね。楽器はその空洞を利用して音を増幅させています。人のカラダも同じように、体内の空洞を利用して音を増幅させています。

 

そして、その大きくなった音を「調音」といって、舌や唇や歯などを用いて、日本語であれば、日本語の音を生み出します。つまり「発音」のことです。

声はどうしたら大きくなるのか?

 

声量(声の大きさ)は、主に2つの要素で決まります。

 

声量UPの方程式

①肺活量×②共鳴力=③声量

 

「①肺活量」は息を吸って、吐くことです。スポーツ選手などの突出した身体能力のある方を除けば、肺活量に大きな個体差はないと言われます。

 

しかし、現代人は姿勢が悪くなりがちです。典型的な日本人の悪い姿勢は、猫背に後ろ重心です。姿勢が悪いと浅い「胸式呼吸」になり、肺が十分に広がりません。

 

肺活量をアップさせるためには、姿勢を改善し、深い胸式呼吸をする必要があります。

 
「②共鳴力」は、私がわかりやすく説明するために作った造語です。どれだけ響かせることができるか、ということです。

 

鼻腔・副鼻腔・口腔・咽頭腔など、顔の中の空洞に響くことを「共鳴」と言います。振動が伝わり、カラダの他の部分が響くことを「共振」と言います。

 

ここでは、2つをひっくるめて「共鳴」としますが、共鳴力をアップさせるためには、カラダとココロをリラックスさせて、緩める必要があります。

 

凝り固まったカラダでは、十分に共鳴しません。

 

特に、首・肩周辺が凝り固まっていると、ミュート(消音)をかけた状態になります。

 

大きな声を出そうと意識し、たくさん息を吸って吐いて、頑張って大きな声を出そうとアクセルを踏んでも、同時にブレーキをかけているようなものです。

呼吸法の種類

 

呼吸の仕方には3通りあります。

 

1.胸式呼吸

2.腹式呼吸

3.肩式呼吸

 

胸式呼吸(きょうしきこきゅう)は通常時に行っています。私たちが普段している呼吸です。

 

腹式呼吸(ふくしきこきゅう)は睡眠時に行っています。私たちは仰向けに寝転がると、自然と腹式呼吸に移り、リラックスして、睡眠に入ります。

 

*仰向けに寝転がっても、なかなか腹式呼吸に移れない方もいます。常に緊張している方、緊張しやすい方です。

 

肩式呼吸(かたしきこきゅう・けんしきこきゅう)は激しい運動時に行っています。一気に酸素を取り込む方法だと言われています。

 

この中で、発声に適した呼吸法は「腹式呼吸」であると言われています。

 

鼻や口から吸った空気は肺に入ります。肺は肺だけで膨らんだり、縮んだりできません。3つの呼吸法は、肺の膨らませ方、縮ませ方が異なります。

 

胸式呼吸は胸郭が広がるのに連動して、肺が膨らみます。

 

腹式呼吸は横隔膜(しゃっくりすると痙攣する部分。みぞおちの奥にあります)が下がるのに連動して、肺が膨らみます。

 

腹式呼吸をするメリットは、主に2つあります。

 

1.声量のコントロールがしやすい
一気に吐いたり、細く長く吐いたり、といった呼吸のコントロールがしやすため、声量のコントロールに向いています。

 

2.喉周りが緊張しにくい
喉から離れた部位でコントロールすることで、喉周りのリラックスした状態を保ちやすくなります。

 

ちなみに、私は24時間、腹式呼吸をしています。意識しないと、胸式呼吸ができません。

 

しかし、胸式呼吸が悪いというわけではありません。深い胸式呼吸は、肩や胸周りを緩めることに繋がり、肩凝りなどの予防・解消に繋がります。

 

また、歌唱の場合は、胸式呼吸と腹式呼吸を同時に用いることもあります。

姿勢・呼吸・発声レッスンの流れ

根本的に「良い声」にするために、レッスンでは「良いカラダ」づくりから指導しています。私の姿勢・呼吸・発声のレッスンは、初回の場合、下記の順番で行っています。

 


1.発声のしくみについてレクチャー

「声はどうやって出るのか?」「声はどうしたら大きくなるのか?」「呼吸法の種類」など、一通りの説明を行います。

 

2.ストレッチでカラダを緩める

ヨガのポーズなどを取り入れたストレッチでカラダを緩めます。共鳴力アップのために欠かせません。

 

ストレッチをせずに、いきなり呼吸や発声のトレーニングをしても、大半の方が思うように呼吸や発声ができません。日常生活の中でカラダが凝り固まってしまっているためです。

 

また、良い姿勢を維持するために、適度な柔軟性が必要です。レッスン初期の段階では、下半身・股関節周りのストレッチを多く行います。

 

3.姿勢のチェック

ご自身の現在の姿勢をチェックします。スマホなどで撮影します。

 

4.姿勢改善のための胸式呼吸トレーニング

姿勢を改善するために、胸式呼吸のトレーニングを行います。「吸う」ことにフォーカスします。「吐いたら吸える」と言われますが、実は、吐くことの方が難しいのです。

 

胸式呼吸のトレーニングによって、胸郭が広がるようになり、肺活量も増し、腹筋・背筋などの筋力もアップします。

 

私はこの方法で、酷い猫背と酷い腰の反りを治しました。首・肩・背中の凝り、凝りによる頭痛、腰痛が無くなりました。そして、劇的に肺活量が増し、呼吸が長くなり、歌唱力が増しました。

 

5.姿勢のチェック

再度、スマホなどで撮影し、ご自身の姿勢をチェックします。ほとんどの方が、4を経て、変化を感じます。

 

6.寝転がっての腹式呼吸トレーニング

一般的なボイストレーニングでは、立ち姿勢のまま、いきなり腹式呼吸を身に付けるように教えられます。

 

しかし、立ち姿勢の状態で、いきなり腹式呼吸ができるようになる人は皆無です。

 

私は、必ず寝転がった状態から、腹式呼吸のトレーニングを行います。

 

また、読む・話すトレーニングを積み、腹式呼吸ができていると思っている方でも、大半の方が、不十分な腹式呼吸になっています。

 

単純に腹式呼吸をするだけであれば、寝転がれば、多くの方が腹式呼吸になります。

 

しかし、発声に活かすためには、越えなければならないハードルが幾つかあります。

 

その際、お腹のインナーマッスルの力が重要です。4の姿勢改善のための胸式呼吸トレーニングで鍛えることができます。

 

7.発声トレーニング

 

寝転がった状態で腹式呼吸をした後、寝転がった状態で発声トレーニングに移ります。この段階で、初めて声を出します。声を出すための、準備が大切です。

 

その後、立った状態での発声トレーニングに移ります。お腹で支えることや共鳴を体感していただきます。

 

ちなみに、初めてのレッスンで、腹式呼吸を十分に活かした発声ができる方は、天才です。

 

そのくらい、難しいことですが、なるべくわかりやすくお伝えすること、体感していただくことを大切に、レッスンを行っています。

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